1人が本棚に入れています
本棚に追加
素敵な出会い
『桜のライトアップ』
何もなく、普段静かなこの地区がお祭り騒ぎになる数少ない行事。
最近はホームページを使って大々的に宣伝し始め、年々少しずつ大掛かりになってきている。
普段何もないが故にこういう行事は皆楽しみにしている。
そして、人混みが苦手な私も例外では無い。
待ちに待った桜の季節。
あちらこちらで桜が芽吹き始める。
・・・・・が、どういう訳だが肝心の川沿いの桜が全く芽吹く気配がない。
「どうしたんだよー。」
小さな声で呟いてみるけれど、答えが返ってくるわけもなく。
私はただ桜の木に手を当てて立ち尽くした。
近所の人達も不安げに桜を見上げている。
「・・今年はライトアップ、ダメかねぇ?。」
ションボリと散歩に出てきたらしいお婆さんが呟いて行った。
(嫌だな・・・・・。)
ポカポカとした春の陽気の中、枝だけの桜なんてシュールだ。
「・・・・・何してるの?」
不意に後ろから声がかかった。
振り向くと中学生くらいの可愛いらしい女の子が不思議そうにこちらを見ている。
「木に手を当てて、念を込めたら咲いてくれるかと思って。」
真面目な顔でそんな風に答えると、女の子はキョトンとしていたがすぐに笑顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!