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それからしばらくたったある日のこと。たまたま夜中に目が覚めた少年は、たまたま部屋を出ていく少女を見た。何処へ行くのか気になって少年は少女を追いかける。
そして少年は見てしまった。少女が要らないと言ったはずの書籍を愛おしそうに抱いているのを。
小さく、ほとんど無くなりかけていたもやもやが少年の中で黒くドロドロしたものに姿を変えて溢れだした。
少年は少女に見つからないように戻り何もなかったかのように眠りについた。
次の日。少年は少女がヘトヘトになるまで遊んだ。
そして少女が疲れ果て眠りについた頃、少年は少女の書籍に火をつけた。
煌々と燃え盛る火の中で少年は笑った。「勝った」んだと。
少年の中に何とも言えない感情が渦巻いた。そして
「キャーーーーーーー!!!」
突如響いた少女の声に驚き少年は少女の元へ。
少女は燃え盛る火の中にいた。必死に手を伸ばして何かを叫んでいる。
少年は戸惑いながら、今更疑問を持った。この部屋は、少女は一体何だと。少年は母親と二人暮らし。女の子なんて知らなかった。だから、少年はソレを口にしてしまった。
「きみは、ダレ?」
直後、音にできないようなすごい響きが空間を支配した。そしてそこにはただ壁だけがあり、少女も部屋も消えていた。
何もなくなったその場所で少年は糸が切れたように倒れた。
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「うっ、ぐぅ・・・・・ヒック・・・。」
小さな小さなその空間に、ひとりの少女のすすり泣きが響く。
「うまくいってたのに・・・・・。もう、すこし・・・・だったのにぃ・・・・・。」
悲痛な声を響かせて、少女は一人。目の前にあるのは灰とかした書籍。少女はソレを丁寧に小瓶に入れた。
「×××くんはダメだった。」
少女はそう呟きながら小瓶を棚へと締まった。涙を必死に堪えながら少女は新しい書籍を手に持ち、パラパラと捲っていく。
少女の覗く世界には、沢山の人が行き交う。パラパラ、パラパラと少女は世界を覗き見る。
「ひとりは、いやだ。さみしいよ。」
一緒に居てくれる、誰かを探すために。
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