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その空間で
淡い儚気な少女が1人。
沢山のオモチャやぬいぐるみに囲まれて、手には分厚い書籍を持って。
「いっしょに、アソボウ?」
そう、少年に問いかけた。少年は嬉しくなって少女の手を取った。 少女は少年の知らない遊びをたくさん知っていた。
いつしか少年は少女に尊敬を抱いた。そして、それが敬愛へと変わるのに時間は要らなかった。
少女は少年をよく褒めた。頭を撫でたりハグをしたり。手を繋いだり一緒に寝たり。まるで母親のように、友達のように、恋人の様に。
甘えたり、甘えさせたり。叱ったり、褒めたり。
少年がここに居ることを疑問に思わない様に。
何故ここに居るのか思い出さないように。
ある時少年が尋ねた。
「いつもきみがもっている、それはナニ?」
少年が指さしたのは、少女が常に持っている分厚い書籍。
「コレはわたしのすべて。いきるためのキボウのヒカリ。」
そう言って、少女は愛おしそうにその書籍を胸に抱いた。
少年はムッとした。
《ぼくがいるのに・・・・・。》
それから少しずつ少年の中にモヤモヤが産まれた。
それは少しずつ、大きく大きく育っていく。それに気付いた少女は慌てる。このままでは少年がこの状況に疑問を抱くかも知れない。少女は少年のご機嫌をとろうとした。
だけど書籍は手放さない。少年のモヤモヤはどんどん貯まる。
少年のモヤモヤが爆発しそうなくらい大きくなったとき、少女はようやく気が付きます。
少年が自分の書籍に嫉妬している事に。少女は書籍を持ち歩くのを止めます。秘密の場所に隠して。
「アレは、もういらない。」
と言った。少年は喜びモヤモヤは少しずつ小さくなった。
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