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特別な人
「夢を見るの
素敵で綺麗な深い深い緑の中に優しい光が降り注ぎ
キラキラと目の前の泉が輝いている
そこかしこに動物達の気配がしてとても安心するの
私はそんなところにポツンとたってそして溢れ出す想いを抑えることなく駆け回る
身体はまるで重力から解き放たれたように軽くて、考えたとおりに飛び回る
木々の隙間を通り抜け、泉の上を駆け抜ける
風のように自由に、どこまでも自由に動き回るのよ
とっても気分が良くて
とっても楽しくて
周りに気を使うことなく大きな笑い声をあげながら深い深いその森を駆け回るの
人は誰もいないのよ
私だけ、あの場所は私だけの世界だったわ
まるで世界の全てが私の味方で、私を愛してくれているみたいだった
そんな世界を私も心の底から愛しているのよ」
にこにこと本当に愛おしくて仕方ないと言う様に彼女はベットの上で楽しそうに話した。
「それでね、目が覚めた時になぜだか思ったの。今は夢だけど、私はいずれあそこに行くんだわって」
薬品の香りがあたりに漂い、沢山の管に繋がれて、囚われの姫のような彼女は夢心地でそう言った。
「だから、私がそこに行けたら悠ちゃんも呼んであげるね。他の奴は嫌だけど、悠ちゃんは私の話を聴いてくれるし優しいから特別なの」
少し照れたように頬を染めて『ナイショだよ?』と唇に人差し指を当てた彼女を僕は見つめて微笑んだ。
そんな彼女を見つめて微笑みかけて僕は考えた。
彼女が自由に動ける世界なら、僕の声も彼女に届くかもしれない。そうなったらどんなに素敵なことだろう。
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