幸せもの

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朝日が上り爽やかな風が窓を叩く 今日も幸せな1日がやって来た だけど、あれれ 何だか体が重いんだ 起きない僕を心配して母さんが扉を叩く 大きな声が頭を揺らす 母さんを心配させたら悪いから僕はのろのろと体を起こした 学校に行くと、僕が遅かったのを心配して友達が駆け寄ってくる ドンっと激しい音と衝撃に体が倒れた 何時ものように笑いながら彼等は僕を見た いつもと様子が違う僕に友達思いな彼等はたくさんの言葉を投げかけた 教室に入って来た先生が僕の方をちらりと見て、何時ものように授業を始めた 倒れている僕に先生が一言 『早く席につきなさい』 きっと僕が授業に遅れたら大変だからそう言ってくれるんだ 先生もすごく優しいな 本当に僕は幸せ者だ 今日もいい事が沢山あって、楽しかった筈なのに それでも膨れあがり続けたソレはもう僕をすっかり飲み込んでいた 表面は僕なのに中身はすっかりソレ等に埋め尽くされた それでも僕は笑顔を顔に張り付けて 今にも僕の皮を破らんとしているソレ等を押さえつける 『今日も僕は幸せ者だ。みんな僕に優しくしてくれている』 自分でも無意識にそんな言葉が繰り返し繰り返し吐き出される     
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