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布団に横たわる兄さんは包帯が一杯巻いてあり、所々血が滲んでいる。
薬草の臭いが充満する部屋の中に入り、布団のそばによる。
怪我により熱が出てるようで、汗をかいていたので近くに用意してあったタオルで汗を拭いてやる。
「・・・母さんは?」
「明希の家に。とても疲れていたみたいだから。」
起きた様子の兄さんの問いに静かに答える。
「・・・道場をさ、継ぐのが俺の夢だったんだ。」
しばらくの沈黙のあと、兄さんは静かに語りだした。
「父さんに認めてもらいたくて、必死に頑張って、功績をあげて。
俺、前の晩に呼び出されてたんだよ。父さんに。やっと認めてくれたって思ったんだ。
・・・でも、父さんが選んだのはお前だった。父さんにお前をサポートしてやれって言われたんだ。
正直、何でだって思った。
『刀を握ったことのないやつに。』
ってな。」
兄さんの気持ちには気づいてた。
ずっと努力して稽古を欠かした事はなかったし、時折僕を見る目に殺気がこもってたから。
兄さんは長男で、普通なら兄さんが継ぐのが当たり前だ。
だから、僕が跡継ぎと言われたとき当然だと思うと同時に兄さんが抗議しないことにも驚いたんだ。
「父さんさ、
『透は刀をちゃんと理解するやつだから』
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