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って言ったんだ。俺、意味わからなくて な。父さんに抗議したんだ。そしたら父さん、何て言ったと思う?」
これは、兄さんにとって悔しい話だ。
ずっと欲しかった地位を裸の王様に盗られた話だ。
でも、兄さんは楽しそうに笑って話す。
「『零士にも解るさ。俺の息子だからな。』
って言ったんだ。そんなこと言われたら俺もうなにも言えなくなちゃうだろ?
その時、理解はしなかったが納得はしたんだ。父さんがそう言うならって。
」
兄さんはそこで一旦言葉を止めて、僕の方へその強い瞳を向けた。
「あれからずっとお前を見てて、やっと解ったよ。」
きっと兄さんは気づいたんだ。僕が誰よりダメなやつだって。
父さんは最後に間違えたって。
「お前が、透が、道場を継ぐべきだ。」
「・・・な、何で?」
一瞬、兄さんが何を言ってるのか解らなかった。
僕は臆病で、弱虫で。逃げてばっかの恐がりだ。
「・・・透。お前は武士失格だ。」
僕の考えを打ち切るように兄さんは強く言いはなった。
「刀を持つのを怖がるようなやつに、人を切れないやつに、戦場へは行かせられない。邪魔なだけだ。」
兄さんの言う通りだ。僕は、武士にはなれない。
「だが、お前は刀の重さを知っている。命を奪うことの意味を充分に理解してる。
それは父さんが何より、戦場へ赴く武士たちへ教えたかったことだ。
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