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「よお。待ってたぜ。お前は絶対来ると思った。」
隆吉の居場所を突き止めるのは簡単だった。
隆吉は道場に手掛かりを残していた。
子供の頃、門下生同士で引けない喧嘩があると自分の名札と相手の名札を床の間へと投げ入れると言う習わしがあった。
床の間には僕と隆吉の名札があった。
道場の中は大分荒らされていたから、故意にやったのかは解らないが他に思い当たるところが解らなかったから、来たが当たりのようだ。
ここは門下生同士で行う決闘の場所だ。
「看板は?」
「あるぜ。ここに。」
僕がそう問いかけると、隆吉は傍らに置いてあった板をかかげて見せる。
「返しほしい。」
簡潔にそれだけ伝えると、隆吉はハハッと笑いながら刀を構える。
「解ってるだろ?ここはこういう場所だ。」
刀の切っ先がこちらに向いている。
僕だって覚悟を決めてきた。こうなることは解っていたから。
僕は、道場から持ってきたものを構える。
「・・・おい。ふざけてんのか。俺を侮っているのかどっちだよ。」
僕の構えたもの、木刀を見て隆吉は睨みながら言った。
確かにこの状況で木刀とかふざけてるようにしか見えないんだと思う。
「どちらでもないよ。僕に扱えるのはこれだけなんだ。」
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