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「これからはお前が道場主だ!解らないことは俺か明希に聞け。俺は全力でお前をサポートしてやる。」
兄さんはやっぱり強い人だと思う。
本当は道場主でいたいと思ってるはずだ。
さっきだって、少し寂しそうな顔をしていた。だから、
「いや、僕はやっぱり兄さんがふさわしいと思う。」
僕は真っ直ぐ兄さんを見つめていった。
ずっと父さんと兄さんの背中をみて育った。
父さんが亡き後、誰よりも道場の事を大事にしていたのは兄さんだ。
呆然としている兄さんに僕は続ける。
「僕はずっと逃げてきた。恐いから避けてきた。その結果、今の僕はすごく弱い。
これじゃ、人に指導するどころの話じゃないよ。」
「だが、父さんは」
「うん。解ってる。父さんは僕に託した。だからいずれは僕が継がなきゃいけない。・・・だから、僕が強くなるまで、兄さんに道場を預けておきたいんだ。」
真っ直ぐ真っ直ぐ、兄さんに伝わるように。
僕がもう逃げるつもりがないことを。
父さんや兄さん、それから明希の期待に答えられるように頑張りたいと思っていること。
しばらくじっと僕を見ていた兄さんから瞳をそらさないようにしていると、兄さんはふっと微笑んだ。
「解った。その代わり、あまり遅いと俺が道場を貰っちゃうからな。」
「心配要らないよ。僕は天才だからね。」
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