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明希は幼馴染みだから、僕の昔をよく知っている。 あの、自信に満ち溢れた頃の僕を。 子供の頃の僕は生意気なほど自信家だった。 今思い出して自分で腹が立つほどに。 家が道場で強かった父。小さい頃から父に指導してもらっていたため、同い年の子にはまず負けなかったし2、3年上のやつらにだって負ける気はしなかった。 故に僕は天狗だった。僕が一番強いのだとなんの根拠もなく確信していた。 少しずつ成長して、父が亡くなり 「お前が道場を引き継げ。」 と言われたときも当然だと思った。 木刀から刀に持ちかえる年になったとき、僕は木刀を手離さなかった。 僕は強い。だから手加減してやってるんだと見下して。 初めて刀を手にしたのは御役人様に呼ばれたときだ。 ずっしりくる鉄の重みと冷たさに少し動揺したのを覚えてる。 初めて、戦に出た。刀を手にして誇らしいと感じていたのは家を出たときだけだ。 戦場につく頃には刀の重みに押し潰されそうだった。 怒声が飛び交う戦場を前にして、沢山の死を目の当たりにして、自分が今まで守られた中にいたことを知った。 そして、初めて人を殺して刀を持つことの意味を知った。 僕はお山の大将で、裸の王様だったことを知った。 そして僕は、刀の重みに耐えられずそれを投げ捨てた。
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