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そっけない態度に多少むくれたものの、彼は身を寄せて小声で話す。
「お前さ、道場継げなかったんだって?ああ、いい。取り敢えず聞け。」
彼の話を要約すると血筋にとらわれ、実力を理解しない道場主に自分達の力を示すのに加わらないかと言う話だった。
要するに、道場破りだ。
「悪いけど、僕は参加しないよ。それに兄さんは長男だから継いだ訳じゃないよ。僕は兄さんが道場主にふさわしいと思ってる。」
そうはっきりと告げると、さっきまでのフレンドリーな態度から一変した。
「チッ!お前も結局血筋かよ。」
「そうじゃなくて」
「この調子だとあの噂も本当みたいだな?戦場から逃げたって。散々威張り散らしてたくせにとんだ腰抜けだな。もう誘わないさ。お前みたいな腰抜けは。」
弁解する間もなく、彼は早口に捲し立てて去っていった。
後半の方は的を得ているので弁解は出来ないのだが。
「はあ~。」
疲れた。世間知らずの自分の行動にこれまで悩まされるとはあの時の僕は微塵も考えていなかった。
これからはもう少し考えて行動しよう。
と、自分をいさめて仕事場に向かう。
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