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(疲れた。今日はあんまり売れなかったな。)
仕事を終えて手のひらにのせた売り上げをみる。
正直無いようなものだが、なにもせず家に居るのも気がひける。
(ただでさえ、戦で家に迷惑かけたからな。)
戦から逃げ帰った奴が引きこもってるなんて世間体が悪い。
逃げた時点でダメなのだが、何もしないよりは良い。
ほんのり赤く染まった道をトボトボ帰る。
この時間はどうも苦手だ。こう言うときは自分の弱さを自覚させられる。
(早く帰ろう。)
少し早歩きで帰路に着く。
家に近づくにつれ、何やら騒がしくなっている。
どうやらなにか起こったらしい。疑問に思いながらも進んでいくと、噂話が流れてくる。
被害、盗られた、沢山、怪我
断片的に入ってくる話に物騒だなと、思っていたが、耳に入ってきた単語に走り出す。
『道場破りだ。』
この辺の道場なんて、一軒しかない。
まさか、まさか、
人混みのなかを掻き分けて家へと急ぐ。
「・・・嘘だろ。」
打ち破られた門に、あるべきはずの物がない。
父が守り、兄が受け継いだはずの道場の顔である看板が。
すっかり変わり果てた門を潜り抜け
中にはいる。
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