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クロはしばらく考える素振りを見せていたが、やがて仕方なさそうに溜息をつくとおもむろにボクの首を放した。
自由を取り戻した体が、情けなくくずおれる。
「確かにこのコンディションであいつらと戦うのは、勘弁してもらいたいぜ。今回はあんたを消すのは止めておくよ。でも、」
クロはボクを睨みつけた。
「あたしはいつでもあんたも息の根を止めることが出来るってこと、忘れないほうが身の為だぜ」
「・・・・・・シロだ」
「は?」
「あんたじゃない、ボクの名前はシロだ」
「息も絶え絶えのくせに、細かいこと気にすんだな」
「誰のせいだと、思ってる」
クロを見上げたボクはふと気が付いて、「あ」と声を漏らした。
「揃ってる・・・・・・」
思わずクロの両足を指差してしまった。
昨日は確かに膝から下がなかった筈の右足が、爪先までちゃんとあったからだ。
「ああ」と呟いて、クロは大したことでもないというように肩を竦めた。
「昨日、生えてくるって言ったろ、聞いてなかったのか?」
いや、確かに聞いてはいた。しかし、それがこんなにも早いとは誰が予想出来ただろう。
一歩間違えていたら、今自分はここにいなかったのかもしれない。
ボクの背筋に薄ら寒いものが駆け上った。
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