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奇妙ないでたちだ。纏っているのは黒いコスチュームだが、いたるところが擦り切れてぼろぼろになっている。脹脛まである漆黒の髪は、何故か右側が引き千切ったようにぎざぎざだ。
凛とした強い光を放つ瞳は、色という色全てを吸い込むように真っ黒だった。
右手をグーの形に握りこんで突き出し、鋭い目付きでボクを睨みつけていたのは、どう見ても一人の少女に他ならなかった。
少女は右手の拳を引き戻したが、警戒するように胸の前で構えている。
この動作で、ボクはこの少女が窓を破壊したのだと理解した。
少女はボクシングのように構えているが、何故か左腕は出さずに右腕だけ構えている。
「あんた、最後のガードマン?」
唸るような声が少女から発せられたが、質問の意図が掴めない。
困惑するボクを無遠慮に眺め回していた少女は、納得したように頷いた。
「そうか。あんた、護る側じゃなくて護られる側か」
謎の台詞と共に構えを解いた途端、少女はぐらりと傾き倒れ込んだ。
ボクは慌てて少女に駆け寄り、その全身を見て息を呑んだ。
少女は無残な姿だった。右足は膝から下がすっぱりと切断されたように消滅している。よく今まで
立っていられたものだ。同様に、左腕も二の腕から先が見当たらない。先程左腕を構えないのを疑問に感じたものだったが、左腕自体が無ければ構える事は不可能だ。
荒い呼吸を繰り返す少女の隣に膝を付き、思わずボクは声をかけていた。
「あの、大丈夫、ですか?」
今まで悲鳴しか上げてこなかった喉が、それ以外の言葉を紡ぐなど誰が想像できただろう。
「あんた、これ見て大丈夫だと思えんのか」
残った左側の黒髪を引き摺りながら、少女が剣呑にボクを睨む。
「思えません」
「律儀にかえすな馬鹿!」
ボクに向かって毒づき、少女は疲れきったように顔を伏せた。
その姿に、またボクは話しかけてしまった。
「えと、どうしたら元気になりますか?」
ボクの言葉に、少女は未知の生物と遭遇したような怪訝そうな顔でボクを見返した。
「・・・・・・そうやって、あたしを騙そうってわけ?」
少女の言葉に、ボクは突然異世界語で話しかけられたかのように困惑した。
勿論少女はボクと同じ言葉を話しているのだが、その意味が全く分からない。
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