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「何なんだよこいつ。なんでこんなに無防備に礼なんか言えんだよ。くっそ、調子狂う・・・・・・」
少女がぼそぼそと呟く言葉が、聞こえてくる。
ボクはようやく、少女が素っ気無かったのも、凄んできたのも、必要以上に声を張り上げたのも、全部照れ隠しだったのだと気が付いた。
微笑んで、ボクは少女に自己紹介した。
「初めまして。ボクの名前はシロって言います。あなたの名前はなんですか?」
少女は、ケッと言うように唇を歪ませた。
「・・・・・・クロ。それがあたしの名前だ」
そう言うと、二度言わせるなというように睨んでくる。
「クロ、これからよろしくお願いします」
ボクが握手を求めて手を差し出した瞬間、視界からクロの姿が消えた。
気付いた時には、クロの右手がボクの首にかかっていた。
「あんた、調子のってんじゃねぇぞ。あんたの首なんて、この右手に力を込めるだけで、ぽっきりと折ることもできんだからな」
そう言うなり、ほんの少しだけボクの首を締め上げる力を強める。
確かに、昨日窓を粉々に砕いた彼女には造作のないことだろう。
しかし、ボクはクロにはっきりと告げた。
「嘘だ」
「はぁ?」
「嘘だ。クロはそんなことしない」
「おいおい、もう頭がいかれちまったか?」
眉を顰めると、クロはますます右手に力を込める。
ボクは半ば振り絞るように言った。
「う・・・・そだ。こ・・・・・んな・・・・ことし・・・・ても・・・・・ク・・・・ロが得する・・・・・・ことなんて・・・・な・・・い・・・・・・」
ピクリと左目を細めると、クロは若干力を弱めた。
「だったら教えて貰おうか。あたしがあんたを消しても得をしない理由とやらを」
「ボクを消したら、君が休めるところは無くなる」
「別にあんたがいなくなっても、問題ないさ。逆にあんたのいなくなったこの空間を占拠してもいい」
「無理だ」
「どうして」
「もしボクを消したら、ガードマンが列を成して君に襲い掛かる。万全とは到底程遠い今の君の現状で、果たしてガードマンの大群と同等に戦うことができるのかな?」
嘘だ。そもそもボクはガードマンが何なのかを全く知らない。昨日のクロの台詞から、それが彼女にとって手強い何かということが分かっているだけだ。
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