105人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
*
文化の香りたかいユイラの皇都ユライナ。
美しい街並みを窓から見おろし、朝昼兼用の食事をとりながら、ワレスはその話を聞いた。
要約すると、こうだ。
マルゴは政略結婚によって、望まぬ相手と結婚した。貴族どうしではよくある話だ。夫婦関係はうまくいかなかった。
そういうときに、学生時代にダンスパーティーで会った青年貴族と再会した。ほのかな憧れが、いっきに激しい恋に燃えあがった。
恋人は、すでに結婚していた。
まずいことに婿養子だ。
二人の仲は両方の婚家から、うとましがられ、別れざるを得なくなった。
別れ話はマルゴと恋人、その妻という、修羅場効果満点のメンバーでおこなわれた。
そのさい、マルゴの恋人は、何者かに毒殺されたのだ。
ちなみに犯人は捕まってない。
「ふつうに考えれば、マルゴか正妻がやったんだろう? 別れ話がこじれたんだ」
ジョスリーヌはウェーブした黒髪をゆらし、首をふった。
「わたしもそれ以上は知らないのよ。ただ、マルゴがジョアンを死ぬほど愛してたのはほんとよ。葬式のときには、ジョアンの遺体にとりすがって泣いて。正妻より、ずっと正妻らしかったわ」
「ふうん。それで、あんたは、おれにどうしてほしいんだって?」
「マルゴを元気づけてほしいの」
ワレスは笑った。
「犯人を捕まえてほしいとは言わないんだな!」
「そんなの興味ないわ。あれ以来、マルゴは気落ちして、屋敷に閉じこもってるの。わたしの誘いも、ふられどおし。あなたなら、マルゴを元気づけられるでしょ?」
にっと笑みを浮かべる、たがいの瞳の奥をのぞきこむ。
本心をさぐりあう瞬間は、ある種の緊張感をともなって、たしかに生きていると感じられる。
「余裕だね。女王さま」
「あなたが思ってる以上に、あなたのことは理解してるつもり」
さあ。それはどうだか。
でも、おもしろそうだ。
「マルゴが寝起きから変死の話をしない女なら、いいな」
「その点は保証するわ。マルゴは何年も社交界を離れてるから、ウワサ話には、うといのよ」
女王さまには皮肉も通用しない。
最初のコメントを投稿しよう!