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 *  文化の香りたかいユイラの皇都ユライナ。  美しい街並みを窓から見おろし、朝昼兼用の食事をとりながら、ワレスはその話を聞いた。  要約すると、こうだ。  マルゴは政略結婚によって、望まぬ相手と結婚した。貴族どうしではよくある話だ。夫婦関係はうまくいかなかった。  そういうときに、学生時代にダンスパーティーで会った青年貴族と再会した。ほのかな(あこが)れが、いっきに激しい恋に燃えあがった。  恋人は、すでに結婚していた。  まずいことに婿養子だ。  二人の仲は両方の婚家から、うとましがられ、別れざるを得なくなった。  別れ話はマルゴと恋人、その妻という、修羅場効果満点のメンバーでおこなわれた。  そのさい、マルゴの恋人は、何者かに毒殺されたのだ。  ちなみに犯人は捕まってない。 「ふつうに考えれば、マルゴか正妻がやったんだろう? 別れ話がこじれたんだ」  ジョスリーヌはウェーブした黒髪をゆらし、首をふった。 「わたしもそれ以上は知らないのよ。ただ、マルゴがジョアンを死ぬほど愛してたのはほんとよ。葬式のときには、ジョアンの遺体にとりすがって泣いて。正妻より、ずっと正妻らしかったわ」 「ふうん。それで、あんたは、おれにどうしてほしいんだって?」 「マルゴを元気づけてほしいの」  ワレスは笑った。 「犯人を捕まえてほしいとは言わないんだな!」 「そんなの興味ないわ。あれ以来、マルゴは気落ちして、屋敷に閉じこもってるの。わたしの誘いも、ふられどおし。あなたなら、マルゴを元気づけられるでしょ?」  にっと笑みを浮かべる、たがいの瞳の奥をのぞきこむ。  本心をさぐりあう瞬間は、ある種の緊張感をともなって、たしかに生きていると感じられる。 「余裕だね。女王さま」 「あなたが思ってる以上に、あなたのことは理解してるつもり」  さあ。それはどうだか。  でも、おもしろそうだ。 「マルゴが寝起きから変死の話をしない女なら、いいな」 「その点は保証するわ。マルゴは何年も社交界を離れてるから、ウワサ話には、うといのよ」  女王さまには皮肉も通用しない。
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