謎の抗体

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 「今、どこか具合の悪いところはありませんか?」  医者は検査結果を見ながら言った。  今日は会社の健康診断の日。健診センターで胸のレントゲン撮影や胃のバリウム検査などの検査を受けた後、医者による結果の説明を聞いていた。  「いいえ、特には」  検査結果の表の隅にある判定欄に『E』が見えた。すぐに専門医による診察や治療が必要であるという判定だ。  「先生、俺、どこか悪いんですか?」  不安で心臓がバクバク鳴っている。  「血液のウィルス抗体価検査の値が異常に高いんです」  「抗体価検査の値? なんですか、それ」  「抗体というのは、体にウィルスなどの病原体が侵入した時に、それを攻撃するために体がつくり出すものなんですが、この検査ではその抗体の量を調べます。ウィルス自体を検出するのが困難な場合でも、それに対応する抗体の量を調べれば、ウィルスの量も分かるというわけです」  「はっきり言って下さい! 俺の体の中で増殖しているウィルスって、何なんですか!」
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