雪と侍

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「雪。お前さんにはまだ難しいかも知れねぇが・・・人ってぇのは愚かで醜くい生き物なんだ。そして、人は妖よりも恐ろしいものだ」 男はそう言い終えると悲しいような苦いような笑みを浮かべ、そっと目を閉じた。 雪は目を閉じた男の横顔をただ見つめたあと静かに項垂れた。 「雨月はあなたと出会って随分と変わりました」 店主のその言葉に雪は伏せていた顔を上げ、その大きな瞳いっぱいに涙を滲ませた。 自分のせいで雨月が変わってしまった・・・。 それは雪にとって悲しいことであり、憎いことだった。 雪は雨月よりたくさんのものを与えられた。 消えるはずだった命を雨月に救われ、名も無かった自分に雨月は『雪』と言う名を与えてくれた。 それだけでなく雨月は身寄りのない自分に居場所をも与えてくれた。 自分は人間だ。 だが、雨月は妖だ。 人間の自分を雨月は認めてくれた。 そんな優しい雨月が自分のせいで変わってしまったのは身を切られるよりも痛い。 自分さえ、居なければ・・・。
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