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「・・・何?」
雪の憚るようなその問い返しに男は思わず眉をしかめ、じっと雪を見つめ見た。
まだ幼い人の姿をしたそれは俯き、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「僕は・・・産まれてすぐに山の中に捨てられたんです。捨てられた僕を拾ってくださったのが雨月様です。雨月様は僕は人間だと仰るけれど、ならば何故、僕は産まれてすぐに山の中に捨てられてしまったのでしょう?」
雪がそう言い終わるよりも早くに雪の目からは大粒の涙がぱたぱたとこぼれ落ちた。
それを目にした男は奥歯を強く噛み締めた。
ぎりりと男の口中で不穏な音が鳴り響く。
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