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店主と男
男は雪の残した涙の跡を食い入るように見つめ、大きな溜息を吐き出した。
子供は苦手だ・・・。
泣かれるとなお、苦手だ・・・。
「・・・行かせてよかったのか?」
男の問いに店主は意地の悪い笑みを口元に滲ませた。
「それを言うのなら止めなくてよかったのかい? 同じ人間の同胞だろう?」
店主のその言葉に男は舌打ちを返し、店主の紅(あか)くなった瞳を凝視した。
何度見てもその血色の瞳はおぞましく、美しいと感じさせられる。
「お前は本当に化け狐だな。・・・気味が悪い」
男のその言葉に店主は微かな笑い声を漏らし、血色の瞳で男を見返した。
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