169人が本棚に入れています
本棚に追加
その在りし日から十年という月日が過ぎ去った。
雨月にとっての十年は短い。
だが、その十年という月日は人間の赤子を十の子供へと成長させる力を持つことを改めて雨月に指し示した。
雨月はそれを受けて時の流れを痛感せざるを負えなかった。
雨月は歳を取らない。
いや、正確には歳を取れないのだ。
雨月は人間ではない。
それでいて獣でもない。
雨月は妖(よう)にあたる。
妖は歳を取らず、寿命を有さない。
だからと言って不死と言うものでもない。
妖は他の妖に殺されたり、力を持った人間に殺されない限りは生き続けることができる。
その他で死を賜るには自死でしかありえない。
妖は他の死を好み、人はどんなものの死をも恐れ、避けようとする。
死への恐れは妖への恐れと差ほど変わらないものだと雨月は了解していた。
妖は死を好む。
それだけで人間は妖を恐れる。
だが、妖が人間を恐れることはまず、ない。
それは妖の方が人間よりも遥かに強く、人間について多くのことを知っているからだ。
人間は妖のことを知らない。
妖は人間のことを知っている。
この知ると知らぬとの差はかなり大きい。
知らぬことは恐ろしいことなのだ。
そのことを妖は知っている・・・。
最初のコメントを投稿しよう!