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姉の私から見ても礼香は大人びていて、変わった子でした。
駄々をこねることも無く手のかからない"良い子"で、わたしの小さい頃とは大違いだなんてよく感心していたものでした。
ただ一つだけ…礼香がよく欲しがったのはミステリーやホラーの小説や映画で、それもグロテスクな描写が多いものを好んでいました。子供らしくなくて気味が悪いと、母は気に入らなかったようでした。
一人でいても平気な顔をしているし、どんなに母が双子の優真ばかりを可愛がっても、ニコニコと優真と同じように嬉しそうな顔をして、何も言わず眺めているだけ。
今となっては、それは表面上のもので本心では深く傷付いていたことが分かるのですが。
本当に礼香は隠すのが上手な子だったんですね…。
綺麗に隠すことを覚えてしまう前に気付いてあげるべきだったのかもしれない。
心が壊れてしまう前に、優しく抱きしめてあげるのが姉である私のやるべきことだったのかもしれない。
無関心で、友達と遊びに出かけることのほうが大切に思っていた当時の幼い私は、そんなことちっとも気付いてあげられなかった…。
あの惨劇から10年以上の月日が流れました。
やっと私は、私の人生を生きる決断をします。
明日、わたしは結婚して佐々江の姓を捨てます。
だから今日は、そのけじめとしてこのノートにあの日のことを全て書き記そうと思います。
20XX年 3月 1日 佐々江 亜弥
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