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私はくまの陰に、見たこともない物体があることに気がついた。手に取ってみる。それは縦長の楕円形でふっくらとした丸みがあり、レプリカのような、わざとらしい羽根がついている。私、こんなもの持っていたっけ?
…ミシッ
「!?」
私はただ持っていただけ。力なんて入れていない。それなのに、それは突如としてひび割れたのである。
ヒビから光が漏れている。それはヒビが大きくなり、割れると同時に陽光すら曖昧にする強烈な光を放った。まるで私を包み込むように、目の前が真っ白になった。
*****
細長い隙間から、うっすらと空が見える。私はその隙間をぐっと開いて、身体を起こした。
見渡す限りの木・木・木。ひんやりと空気は冷たい。
「えーと…」
ここは、どこだ?
ここに来るまでのことを思い出してみる。私は部屋にいて、課題をし忘れたことを思い出して、スマートフォンを手に取って………そのスマートフォンは、変わらず手の中にある。
「誰かいるの?」
突然の声に思わずビクッと背筋が伸びる。サッと振り返ると、そこには見たことのない少女がいた。
栗毛色の髪をツインテールにした猫目の彼女は、中学生くらいだろうか。きょとんとした顔で、その目をぱちくりとさせた。
「え、あの……?」
「ここ、危ないよ。神隠しに遭うよ」
「神隠し?」
「そう。昔からそう言われてるの。知らないの?」
私はこくりと頷いた。少女はふーっと肩を落とす。
「とりあえず、ここから出よう。こっち」
慌てて手招きする彼女を追いかける。彼女は時々振り返りつつ、神隠しの話をしてくれた。
「昔、ここがまだ梯子村っていう村だったときに、大飢饉が起こったんだって。それを神様が怒ったからだって生け贄を差し出すことで鎮めようとした時に、選ばれたのが7歳の子どもだったらしいよ。
それから、飢饉は収まったけど、子どもが消えるようになったんだって」
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