第1章

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「えーと…私は、三浦市なんだけど……」 「三浦市?三浦市って、正反対のところにあるよね?なんでこんな何もないところ来たの?」 そう言われても困る。自分でも、なぜこんなところにいるのかわからないのである。 「えーと…………」 目を逸らした時、壁にかけてあるカレンダーが目に入った。2013年2月。思わずスマートフォンの時刻を見る。2017年2月。あのカレンダー、4年も前のものだ。 「ちょっと、スマホなんか見てないでよ!」 萌はスマートフォンを奪い取った。思わず「あっ」と声が漏れる。すると、萌の動きが止まった。その瞳は私のスマートフォンの画面を見ている。 「ねえ、このスマホの時間、おかしくない…?」 今度は「えっ」という声が漏れた。 「おかしくない……と、思うよ」 「じゃあ、なんで時刻4年後なの?どっから受信してるのよ。この時刻」 頭の中がハテナマークで埋め尽くされる。何言ってるんだ?4年後だって? その時、ふとカレンダーを思い出した。また、カレンダーに目を向けてみる。2013年。  まさか――。  ごくりと唾を飲み込む。イチかバチか。話してみようか。私が、この町に来たときのことを。 私は机の上に置いた拳をぎゅっと握った。 「あのね……信じてくれないかもしれないけど――」 *****  萌は酷く間抜けな顔をしている。さっきまでの勢いはどこへやら。 「…つまり………未来から来た、ってこと………?」 「たぶん」 正直に言って、私も信じられない。現実にこんなことがあるなんて。しかし、私のスマートフォンは確かに2017年を示している。そして、見比べた萌のスマートフォンは2013年を示している。 「え―と、じゃあ、つまり、ね…これから起きる大事件とかもわかるっていうこと………?」 「たぶん」
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