第3章「止まった時間」

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「待ってたよ、蓮くん。久しぶりだね」 香奈は俺が教室に戻ってくることがわかってたのか? そんな事を考えながら彼は子供の頃を懐かしむ様に答える。 「本当に久しぶりだ。小学校以来か?」 「そうだね。蓮くん、引越してから連絡してくれなかったし…」 「あー、それは、まぁ、ごめん。そ、それよりさ、ケータイここら辺に置いてなかった?」 「それって、これの事かな?」 そう言って彼女は制服の内ポケットからケータイを取り出した。 なるほど、俺が教室に戻ってくるのがわかってたのはそういう事か。 もやもやが無くなりスッキリした様子で答える。 「あ、そう、それそれ。持っててくれたのか。ありがとな」 言いながら手を伸ばした。 次の瞬間、彼の手にはケータイではなく、彼女のあたたかい温もりがあった。
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