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「…ゴメン」
「ヒョーマ、葵もテンパってたからさー」
「だから?それで地雷踏み抜いたら元も子もねぇだろ」
孝則の様子を見るに、彼にも話していなかったのではないか?
前回の見舞いの時の様子を尋ねると、孝則は居心地悪そうな表情を浮かべた。
「前ん時は、俺が怒らせちゃってさ…」
「話にならなかったって事か」
兵馬はため息を吐いて、孝則をまじまじと見つめる。
「俺こういう面倒臭いの嫌いだって知ってるだろ?」
「面倒臭いって、ひどい…」
「じゃ、帰るから。ちゃんとその女から情報絞っとけ。で、なんかあったら、連絡してくれ」
涙ぐむ葵を無視して、兵馬は帰った。
揉め事は嫌いではないし、興味を湧いた。
しかし、兵馬自身は和久井とそこまで親しい訳ではないし、救ってやろうという気にはならない。
「加賀くん冷たい…なんであんなの付き合ってるの?」
「え、まー、昔のよしみ?あれでも5年来の付き合いだからさー」
孝則は問いの答えに戸惑った。
距離を縮めれば愉快な部分はあるし、兵馬には個人的に恩がある。
しかし、性格が良いとはお世辞にも言えない。それだけが困りものだった。
2人と別れて帰った夜。
近所のコンビニに向かう途中の兵馬は、人気のない駐車場に連れていかれる男女を目撃した。
囲んでいるのは6名のチンピラ。兵馬は内心で舌なめずりをする。
買い物を一旦後に回し、駆け寄る。
手前にいたチンピラ目がけて、ハイキックをお見舞いした。
「なんだお前!?」
「ごみ掃除だ!死ね!」
蹴りを食らったチンピラは薙ぎ倒されたきり、動かなくなる。
高校生にもなると、喧嘩一つするのも一苦労だ。
兵馬は突っ張った男達に友情すら感じながら、思い切り拳を振るった。
日頃の息苦しさを晴らすように、鬱屈を乗せた拳を叩きつける。
早くて2年、遅くとも5年後には、自分も社会の歯車となるのだ。
こんな風に燥げるのは今の内だけ。諦めにも似た徒労感から顔を背け、兵馬は乱舞する。
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