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授業後、葵は病院に出かけた。
2人で加賀家に向かう途中、兵馬は何者かの視線を感じた。
「どした?」
「何でもない」
兵馬は自室に入り、古びた通学鞄を取り出す。
臭いは漂ってこない。
息を呑む孝則に中が見えるようにしながら、鞄を開いた。
「おぉおお――ッ!」
化けネズミは鞄の中、息絶えていたらしい。
持ち上げるとズシリと重く、また身動きをしない。
鼻を近づけると、腐敗しつつある生ごみのような臭いがした。
「ビビり過ぎだろ…」
「だって、うぅエ!」
孝則は足だけを動かして後退する。
壁に背をつけてえづく孝則を、兵馬が咎める。
吐くならさっさと便所に行け。
「そいつどうすんの!?」
「んー、家にいつまでも置いとけないしな」
兵馬は携帯を取り出す。
大人に見せても何も分からない気がするが、通報しておいて損はない。
――どこに連絡すりゃいいんだ?
ネットに繋いで検索してみると、生物博物館か大学の研究室で問題なさそうだ。
しかしそのような場所に持ち込んで、受け取ってもらえるだろうか?
兵馬にそのあたりの伝手はないし、孝則も同じだ。
「人目につかなそーなトコに埋めれば?メンドくせーし、俺らが見つけるくらいだから、だれか連絡してるっしょ」
「そっか…そうだな~」
兵馬はネズミ入りのかばんを手に取って、立ち上がった。
元々気が進まなかったのだ。どこかに埋めて、忘れればいいか。
孝則は疲れた足取りで、その後ろからついてくる。
「これなんなのかな、新種っぽいけど」
「知らねぇ…こいつが犯人かも」
兵馬は冗談めかして言う。
「えー、怖ェ~!」
「いや、お前が行ったんだろ!」
孝則と別れて、兵馬は近所にある鯉窪公園に向かった。
本音を言うともっと遠い場所に埋めておきたいが、これで地下鉄に乗ろうものなら、それこそ通報されてしまう。
鯉窪公園は溜池や雑木林があり、何か隠すにはもってこいだ。
おかげで死体が埋まっている、などと自由が丘の小学生からは噂されるが。
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