〈2〉【 anna 1 】*

2/11
275人が本棚に入れています
本棚に追加
/2494ページ
でも初めて愛することを教えてくれた人。 一人でいる夜が切なくて、泣いてしまうことを教えてくれた人。 身を引くときには、心が壊れそうなほどの悲しみが止まらないことを教えてくれた人。 その人の静かな幸せを願うことが、本当の愛だと感じさせてくれた人。 家族を愛していた彼が、苦しむのを見るのが辛くて別れた。独立という形で。 彼はできる限りのバックアップをしてくれた。それは今も続いているけれど、関係は終わっている。 藤村に抱かれながら、ボスを想うことがある。 そんな時は藤村に申し訳なくて彼に尽くした。 ボスとそんな関係だったことは、千夏には話していない。うぶな彼女は、そんなことを考えようともしない。 千夏のキラキラがそういうところから来ているのだとしたら、もう私には出せない光だ。 「それで?次の約束したの?」 私のそんな単純な質問にも彼女は頬を染める。かわいいじゃない。 『土曜に逢う。』 幸せそうに答える。 「よかったね。」 心からそう思った。でもちょっといじめてみたくなる。 「でも、もてるんじゃない?ミュージシャン。それに慣れてる感じするし。遊ばれるなよ。」 千夏もそこはわかっているみたい。 『・・わかってるよ。』 とちょっと俯いた。     
/2494ページ

最初のコメントを投稿しよう!