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でも初めて愛することを教えてくれた人。
一人でいる夜が切なくて、泣いてしまうことを教えてくれた人。
身を引くときには、心が壊れそうなほどの悲しみが止まらないことを教えてくれた人。
その人の静かな幸せを願うことが、本当の愛だと感じさせてくれた人。
家族を愛していた彼が、苦しむのを見るのが辛くて別れた。独立という形で。
彼はできる限りのバックアップをしてくれた。それは今も続いているけれど、関係は終わっている。
藤村に抱かれながら、ボスを想うことがある。
そんな時は藤村に申し訳なくて彼に尽くした。
ボスとそんな関係だったことは、千夏には話していない。うぶな彼女は、そんなことを考えようともしない。
千夏のキラキラがそういうところから来ているのだとしたら、もう私には出せない光だ。
「それで?次の約束したの?」
私のそんな単純な質問にも彼女は頬を染める。かわいいじゃない。
『土曜に逢う。』
幸せそうに答える。
「よかったね。」
心からそう思った。でもちょっといじめてみたくなる。
「でも、もてるんじゃない?ミュージシャン。それに慣れてる感じするし。遊ばれるなよ。」
千夏もそこはわかっているみたい。
『・・わかってるよ。』
とちょっと俯いた。
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