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「大きなお世話だ!」
大きく声を張り上げたカオルだったが、妙に子供っぽく聞こえる。それを背中で聞き流した涼太は、チャラ男らしく軽く手を振り去っていった。
カオルは公立高校一年の男子生徒だが、名前と小柄な体格。そして整った女顔がコンプレックスだった。高校を決めたのも、男子の制服が今時では珍しい学ランだったからというくらい、自分の見た目を気にしていた。
カオルは、ショーウインドウを見掛けては服装をチェックする。男らしい制服がなんとなくコスプレに見えてしまうくらいだ。『この線の細さが女子にキモがられる原因なんだよな……』
ショップにディスプレイされている鏡で眉間にシワを寄せてみたり、男っぽく装おうと努力はしてはみるのだけれど、どうしても宝塚の男役にしか見えない。
ふと何者かの視線を感じて、鏡の端に目をやる。すると、春の心地よい陽気にもかかわらず目深くフードを被った人物が映っていた。
「さっきのショーウインドウでも見かけた奴だ、体格からして女らしいけど――」
『もしかして後を付けられてる? 芸能事務所の人とか? まさか。それとも僕、じゃない俺の追っかけ――じゃなくて告られたりして、まさかね。アハハ』
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