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とある、お寺の住職が、老朽化した本堂をしっかりとした土地に建て直そうと、新たな歴史を積み重ねるため、京都と奈良の県境のそばに移設してきた。
そして、お寺のシンボルとなる、大きな仏像を二人の仏師にお願いすることにした。
「実は、こちらに目立つような、10メートルほどの仏像を建てたいのです」と住職が、場所を指定した。
そこは、奈良の京都の県境のど真ん中。
「なるほど、奈良県民にも、京都府民にもご利益が広がるようにとのことですな」
この道、30年の仏師、滝繁(たきしげる)58歳は、初めて挑む大型の仏像に、イメージを大きく膨らませていた。
住職は出来上がりを想像しながら、空を見上げる。
「ここに観音菩薩像を建てて頂ければ、観音様は遠くまで見守って下さります。是非ともよろしくお願いいたします」
「お任せください。私も、私の弟子も、ここまで大きなモノを手掛けるのは初めてございますが、師弟共々、力を出して仏心をこめて彫りあげます」
「弟子の方がおられるのですか?」
「ええ、韓国から来た、この道まだ10年ほどですが、腕は、私が言うのもなんですが、随分と上達しております」
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