bigining of the end

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男はナイフを逆手に持って、強く握り締めた。 「心の弱いハジメは、悪意のあるハジメに負けたんだ。大局的に見ればね」  徐々に僕の視界が開けてきて、男の顔がはっきりと見えた。なにかしゃべろうとしたが、舌がもつれ、喉からは意味のないうめき声みたいな音しか出なかった。現実の世界で生きたいという僕の願望はたんなる空想だったのか? 僕の意志はいつまでたっても空想の中にある。まるでずっと絵の中で絵を描いていたような気分だ。なんだか疲れたけど、もうどうでもいい。僕はもうすぐ死ぬ。そして、この空想の世界で僕の魂は永遠の存在になるだろう。そう心で思った時、男はかすかに笑って小さくうなずき、ナイフを大きく振り上げた。
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