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お母さんは、私が小学生の時に死んだ。
交通事故。
私が帰ると、お父さんが真っ青な顔で私を迎えた。
お葬式の日。
親戚や近所のおばさん、お父さんもわんわん泣いていたけど、私は泣かなかった。
泣けなかった。
「こんなの、ドッキリだ」
そう、思っていたから。
実感したのは、それから何日かしてから。
お葬式から何日かは、おばあちゃんがご飯を作ってくれていた。
そんなおばあちゃんも家に帰って、その日の夕食は、小さい器に入った、唐揚げ弁当だった。
ご飯だけあったかくて、唐揚げは冷たく、固かった。
その時初めて、私は泣いた。
あぁ、お母さんは、もう戻ってこないんだな、って。
お父さんは、そんな私を見ながら、
「ごめんな……ちゃんとしてやれなくて、ごめんな」
って、謝ってた。
それから、私は出来ることは自分でやろう。不自由を感じるなら、感じないくらいに出来るようになろう、と頑張った……と思う。
仕事で忙しいお父さん。
家事は全部、私がやった。
掃除、洗濯。
料理だって、お父さんより上手くなった。
でも、いつ出ていくか、いつ帰ってくるか分からないほど忙しいお父さんに、弁当のひとつも作ることは出来なかった。
「適当に済ませるから大丈夫」
お父さんは、いつもそれ、だった。
ひとりでご飯を作り、出来立てのご飯をひとりで食べる。
そんな生活が続いた。
この時から、
私は、ひとり。
そう思うことにした。
お父さんが働く理由も知っている。
でも、下手に期待をしてしまったら、叶わなかったときに落ち込んでしまう。
だったら、最初からひとりだと思った方が、気が楽だ。
そう、思うことにした。
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