1:私は、ひとり。

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お母さんは、私が小学生の時に死んだ。 交通事故。 私が帰ると、お父さんが真っ青な顔で私を迎えた。 お葬式の日。 親戚や近所のおばさん、お父さんもわんわん泣いていたけど、私は泣かなかった。 泣けなかった。 「こんなの、ドッキリだ」 そう、思っていたから。 実感したのは、それから何日かしてから。 お葬式から何日かは、おばあちゃんがご飯を作ってくれていた。 そんなおばあちゃんも家に帰って、その日の夕食は、小さい器に入った、唐揚げ弁当だった。 ご飯だけあったかくて、唐揚げは冷たく、固かった。 その時初めて、私は泣いた。 あぁ、お母さんは、もう戻ってこないんだな、って。 お父さんは、そんな私を見ながら、 「ごめんな……ちゃんとしてやれなくて、ごめんな」 って、謝ってた。 それから、私は出来ることは自分でやろう。不自由を感じるなら、感じないくらいに出来るようになろう、と頑張った……と思う。 仕事で忙しいお父さん。 家事は全部、私がやった。 掃除、洗濯。 料理だって、お父さんより上手くなった。 でも、いつ出ていくか、いつ帰ってくるか分からないほど忙しいお父さんに、弁当のひとつも作ることは出来なかった。 「適当に済ませるから大丈夫」 お父さんは、いつもそれ、だった。 ひとりでご飯を作り、出来立てのご飯をひとりで食べる。 そんな生活が続いた。 この時から、 私は、ひとり。 そう思うことにした。 お父さんが働く理由も知っている。 でも、下手に期待をしてしまったら、叶わなかったときに落ち込んでしまう。 だったら、最初からひとりだと思った方が、気が楽だ。 そう、思うことにした。
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