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「嫌いなものは嫌い。好きなものは好き。私は好きですよ。そう言うの。同じ種族だからといって、自分の気持ちを押し殺してまで、好きだと言う必要はありませんしね。………ほら、居るじゃないですか。自分とはうまが合わないな、と思う人。その人を好きになれないのと一緒だと私は思いますよ?」
俺はてっきり、人間ごときに何がわかるんですか?みたいな事を言われるものかとばかり思っていたから、正直この反応には驚いた。と同時にアルバーニさんは優しいんだな。と思った。
「ですが……」
そう言った後、アルバーニさんの表情が陰る。数分、口を閉ざしていたが、決心したように重々しく口を開いた。
「それは、魔王様の前では軽々しく言ってはいけません。多分、私に打ち明けることに、悩んでくれた貴方のことですから、そんな事はないと思いますが……魔王様は私よりずっと長く生き、その分だけ人間の手により、無下に殺された者達のことを知っています。当然、人間に対する憎悪も、私より遥かに上です。魔王様が連れてこいと仰せですから、殺しはしないと思いますが……正直に言って私には貴方の命は保証出来ません。……それを心に止めておいてください。」
真剣で、真っ直ぐな、強い光が灯っている瞳で見つめられると、強く頷くしか選択肢がない。元々、軽々しく口に出すつもりはなかったので、その意識を伝えるためにも強く頷いた。
「……ああ。ありがとうな。アルバーニさん。」
「あ、あの。その……」
先程とは正反対に耳まで赤く染めて、目をうるうるさせながら、アルバーニさんが俺の袖の裾を掴む。
「……私のこと、名前でユリウスって呼んでください///だめ、ですか?」
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