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表情は非常に穏やかだが、言っている言葉に棘が大分混ざっている。……本当にこの悪魔は『人間』が嫌いなんだとひしひしと伝わってくる。俺よりも生きている歳分きっと嫌い度が上だ。そんなことを考えながらされるがまま酒場を出ていく。…それにしても魔王か。まあ、人間の王に気に入られる方が最悪か。にしてもな。なんで勇者として召喚された俺をわざわざ自分のテリトリーにいれるのか。わからないな。
「…たさん、彼方さん。大丈夫ですか?ぼんやりしているようにお見受け致しましたので声を掛けさせていただいたのですが………ご迷惑、でしたか?」
おっと、いけない。アルバーニさんに心配をかけてしまった。
「すまない。大丈夫だ。そしてありがとう。俺を人間の沢山いる所から助けてくれて。本当に助かった。」
すると、次の瞬間何か悩んでいる顔をして遠慮がちにこう聞いてきた。
「貴方はその…"人間が"嫌いなのですか?」
人間という所だけ憎々しげに言うアルバーニさんの顔は嫌なものを思い出したように潰れる。……きっと俺なんかより強い思いがある。そんなアルバーニさんの前で軽々しく口にして良いのだろうか?考えたすえ、俺の導きだした答えは
「ああ、嫌いだ。俺は毎日毎日、なんで人間として生まれたのだろうと自分に問い続けている。できることなら人間ではない種族になりたいと。そう思っている。」
隠し通さず素直に言う。これに対してのアルバーニさんの反応はかなり予想の斜め上をいくものだった。
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