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「あー。彼女ほしいなー」
中川がうめくように呟く。
「彼女なら誰でもいいのかよ」
「誰でもいいわけじゃないけど、一人は寂しい」
「そうか」
「……ここは俺がいるだろっていう所じゃねぇの?」
馬鹿か。
「馬鹿か」
心の中の言葉が口にこぼれていた。
「気持ち悪いだろ」
「まぁ、確かに」
「そもそも、どうしてそんなに彼女が欲しいんだよ」
「セックスがしたい」
「……身もふたもないな。ならそういう店に行けよ」
「無理だろ。だって恥ずかしいし」
「いや。もうお前なんかあれだわ」
「そういえばさ。俺弟できたんだわ」
「唐突だな。……っていうか今更弟って」
「ああ。勘違いするなよ。もうすぐ生まれるとかじゃなくてな。妹が結婚したんだ」
「ああ。綾香ちゃん。今、何歳だっけ?」
中川とは幼馴染だ。だから妹は子供のころから知っている。その事を考えると綾香ちゃんが結婚というのは少し感情移入してしまう。
「今年で22」
「結婚してもおかしくない年齢だな」
今の時代では少し早いかもしれないが、特に問題はないだろう。
「そうだな」
「おめでとう」
「……ありがとう」
どこか複雑な表情を浮かべて中川答える。
「なんだ、結婚に反対なのか?」
「いや、そんなことはないんだけどな」
「じゃあ、なんだよ」
「俺の弟45歳なんだ」
「…………お、おう」
「なんだよ。その反応」
「予想外の着地点だったんだよ」
「綾香ちゃんの結婚相手が45歳ってことか?」
「そう」
「お前いくつだっけ?」
「お前と同じだよ25歳」
20歳年上の弟。正直想像ができなかった。
「それは何というか。どこで知り合ったんだ? 職場?」
「キャバクラ」
「……お、おう。お客さんと結婚するって本当にあるんだな」
「あるんだよ」
「それは複雑な気分だな。大変だったんだろ?」
キャバクラのお客と店員じゃ結婚までに色々あったんだろう。
「いや、違うんだよ。両親は結婚に反対しなかったし、俺も反対してない」
「そうなのか?」
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