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「ああ、凄ぇいい人なんだよ。面倒見をいいし、俺にも優しくしてくれるし。経済的にも余裕があるみたいだしな。こないだも新車買ってた。500万ぐらいする奴。現金一括払いで」 「そりゃ凄いな」 「俺、実家に帰るたびに弟に焼肉奢ってもらってるんだ。……兄貴なのに。そして、綾香がドヤ顔してくるんだ。お前にはこの甲斐性はないだろって」 「考え過ぎだろ」 「いや、あれは言葉で言わなくても目が語ってるね。だから、俺も甲斐性のある彼女が欲しい!」 「いや、目指すところが違うだろ」 また、無言になる。ごみ袋にしている袋とは別の袋から中川がビール缶を取り出しぷしゅと音を立てて開ける。 駐車場に車が一台入ってきた。何となく視線を送る。スムーズな動きで駐車すると中から男女二人が出てきた。カップルだろう。 男はスーツ姿で同い年ぐらいでやり手のビジネスマンのように見えた。 女が腕を組んで安達と中川が座っているベンチの前を通り過ぎて行く。 それを無言で見つめながらビールをあおった。 「今の子。胸でかくね?」 二人が完全に通り過ぎて離れたベンチに座るのをまってから中川が言った。視線は夜空を見上げている。 「でかかった」 安達も夜空に視線を向けたまま言った。 「佐藤に女の子紹介してもらおうかな」 佐藤は大学の時に知り合った友達で背が高くて顔も良くて大企業に勤めている優良物件だ。 当然、女の子の知り合いも多い。 「あいつ、今彼女いないんだっけ?」 「ずっといないぞ」 「意外だよな。モテるのに」 「あいつ、屑だからなぁ」 安達の言葉に中川も苦笑しながら同意する。 「彼女ほしいならナンパでもすれば?」 「俺にそんな恥ずかしい事できると思うのか? やるならお前も一緒にやるんだからな」 「嫌だ」 二人して声を掛けられずにもじもじしている光景がたやすく想像できてしまった。 「ナンパと言えば佐藤だろ」 「佐藤は確かにしょっちゅうナンパしてるよな」 「ナンパって成功するものなのか? 都市伝説じゃないの?」 「あきらめない心が成功の道って佐藤が言ってた」 「その努力をもっと違う所に向けろっていうの」 「だよな」 「それで、そんなにナンパしてるのになんで彼女いないんだよ」
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