夕暮れの中で

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昼休みになると、私はお弁当を持って教室を出た。 これは最近の私の日課になっている事。 教室のある2階から階段を下り、食堂のある方とは逆の廊下を進み、今は使われていない旧校舎へ繋がる外廊下に出る。 旧校舎の入口は開いていないのだけれど、入口の2段の階段になっている、日当たりのいい場所に用事があるのだ。 「紀一くん」 私が声をかけると、野良猫の喉を撫でる手を止め、階段に腰掛ける紀一くんが顔を上げた。 「また来たのかよ。懲りねぇな」 「懲りないよ」 呆れたように溜め息を吐く紀一くんの隣に腰掛けながら、私はフフッと笑いながらそう言った。 「今日は猫ちゃんにも持ってきたんだー」 お弁当の包みに一緒に入れてあった、紙パックの牛乳を取り出すと、お弁当の蓋に中身を出して猫ちゃんに差し出す。 ぺろぺろと、舌で牛乳を飲む姿を眺めながら、ちらりと紀一くんの方に視線を向けると、口角を引き攣るように上げておかしな笑顔を作っていた。
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