牢

第1章

私が素っ裸で入れられている牢は、縦横高さ全てが３メートルの正方形。

壁、天井、床、全てが柔らかい素材で出来ていて、机も椅子もベッドも何も置かれておらず、無論毛布も無い。

部屋の４カ所にある角の１つにしゃがむと自動的に穴が開く、これがトイレ。

食事は壁の１部に小さな穴が開き、そこからチューブが突き出されるだけ。

チューブをくわえると無味無臭の泥状の物が口の中に押し込まれ、一定の量を押し込み終わるとチューブは引き戻され穴が元に戻る。

この泥状の物の中に、必要な栄養と水分が全て含まれていた。

牢に入れられてから人と会話した事は一度も無く、食事や消灯時間も不規則で時間の経過が分からない。

終身刑を受けた私には、時間を知る必要が無いと思っているのだろう。

そんな私のたった１つの楽しみは、ドアに付いている直径１０センチ程の窓から辛うじて見える、通路にある窓から見える空。

差し込む光のせいで、夜空しか見る事ができない。

だから夜、部屋の電気が消えてから窓に顔を押し付け、辛うじて見える夜空に願う。

「何時かこの部屋から解放され、満天の星を見上げる事ができますように」と。

人類絶滅を企てた男がただ１人収監されている全自動の刑務所、全てがコンピューターで制御されている。

男が楽しみにしている夜空も、コンピューターが作りだした映像だった。