1813人が本棚に入れています
本棚に追加
「聴いてたよ。後列にいただろ」
「ならいいけど。率直な意見を聞かせてよ、今後のために」
「そうだな……。敢えて注文をつけるなら中盤のエピソードかな。論点が分かりにくい気がする」
「あ、あそこか。やっぱりねー」
話の合間にエレベーターホールに目をやったが、もう彼女の姿はなかった。
「まあ、これはあくまでも僕の感想だから。慰労会で森田たちにも聞けばいい」
時間が気になり、聴講客がはけてしまうと僕は香子をエレベーターに促した。
「店は七時に予約してるから、六時半過ぎにここを出る。僕は一旦職場に戻るよ」
「それまで私はどこにいればいい?」
「さっきの控室で待ってて。僕も同じフロアだ」
会場の片付けは森田に任せ、僕は香子と共に階下に降りた。
最初のコメントを投稿しよう!