彼女との時間

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「聴いてたよ。後列にいただろ」 「ならいいけど。率直な意見を聞かせてよ、今後のために」 「そうだな……。敢えて注文をつけるなら中盤のエピソードかな。論点が分かりにくい気がする」 「あ、あそこか。やっぱりねー」 話の合間にエレベーターホールに目をやったが、もう彼女の姿はなかった。 「まあ、これはあくまでも僕の感想だから。慰労会で森田たちにも聞けばいい」 時間が気になり、聴講客がはけてしまうと僕は香子をエレベーターに促した。 「店は七時に予約してるから、六時半過ぎにここを出る。僕は一旦職場に戻るよ」 「それまで私はどこにいればいい?」 「さっきの控室で待ってて。僕も同じフロアだ」 会場の片付けは森田に任せ、僕は香子と共に階下に降りた。
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