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白雪姫の盛大なる勘違いに王妃は安堵した。
「あ、当たり前だ! 私はただの林檎売りさ! し、白雪姫を殺すなんてとんでもない!」
「そっかぁ! 私ね、本当は少し疑っちゃったんだ。ごめんなさい、でも悪い人じゃなくて良かった! ねえその林檎、お婆さんを疑ったお詫びに私が買ってあげる! 美味しくないって言うけど売れ残ったら困るでしょ?」
「えぇ!? いや、えっと、これはダメよ! 気を使わないでちょうだい! 本当にマズイの! 美味しくないの! あ、ダメ! ちょっとぉぉ!」
日々鍛えている白雪姫に敵う訳もなく、あっという間に篭から毒林檎を奪われてしまった。
白雪姫は強引に銀貨を王妃に手渡すと、
「これで売れ残りは無し! おめでとう、完売だわ! さてこの林檎、私一人で食べるのは淋しいわ。だから一緒に食べましょう。大丈夫、心配しないで。分けて食べたらなんだって美味しく感じるものよ。それより見てて!」
そう言って無邪気に笑うと王妃に向かってウィンクをした。
白雪姫は「見逃さないで!」と言いたげに何度も何度も王妃を見る。
そして林檎を両手で掴み腹の前でしっかりと固定させると、
「ふんぬっ!!」
鈴の音色はどこぞに行ったか、野太い声で気合いを入れると見事に林檎が真っ二つ、ナイフいらずで二等分だ。
「えぇぇぇぇぇ!?」
____素手で林檎をかち割りやがった!
白雪姫の豪腕っぷりに引きまくる王妃。
「ハイ! これで半分こになった! えへへ、びっくりした? 一緒に住んでる木こりさん達も林檎割るたび驚いてくれるんだぁ!」
割った林檎を早速シャクシャク食べながら、天使の笑顔でもう半分を王妃に差し出す白雪姫。
王妃は眩暈が止まらない。
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