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想定外の連続で王妃の心はすっかり折れてしまった。
とりあえず早く城に帰りたい、傷の手当をしたかったし、少し眠りたいとも思った。
もう白雪姫なんかどうだっていい。
顔も見たくないし殺す価値も無い。
____帰ろう、……うん、私のお城に帰るんだ、
王妃は何とか立ち上がると、腫れあがった口元を押さえながらヨロヨロと歩きだした。
後ろでは白雪姫が騒いでいるが振り返るのも面倒だった。
今思うのは、体が重い、城まで歩けるだろうか……と、これだけだ。
牛の歩みで何歩か前進していると、コツンとつま先に何かがあたった。
首だけを下げあたった物を確認する。
それは白雪姫に押し付けられた、半分にかち割られた林檎だった。
王妃の努力の結晶であり、最高傑作でもある最強の毒入り林檎は土にまみれ、歯型のような跡と、そこに付着する血液らしきものが茶色く変色していた。
かすむ目でジッと見つめる王妃。
何か……重要な事を見落としている気がしてならない……と、眩暈を捻じ伏せ記憶を辿った十数秒後、唐突に理解した。
「さっき……白雪姫に背中を叩かれた時だ。あの時、林檎が歯にあたって、その勢いで齧ってしまったんだ……その後、どうした……? そうだ、白雪姫に強引に起こされて咳き込んで、……それで何かを……いや、おそらく毒林檎の欠片を呑みこんだ……!」
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