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ダンスコンテストにエントリーをした数か月前の森の中。
王妃は振り付けに後方倒立回転跳び、通称バック転を加える為に白雪姫から特訓を受けていた。
最初は恐くて怖気づき、やっぱりできない! と弱音を吐いていたものの、根気強く教えてくれる姫のおかげで、ちょっとした補助があればどうにかこうにか飛べるようになってきた、そんなある日。
王妃は意を決して白雪姫にこう言った。
「ねえ、だいぶ飛べるようになったわ。次は補助無しで飛んでみる。それでもしも上手くいったら……白雪、あなたに話しておきたい事があるの」
王妃は目を伏せ、ケガ防止にと白雪姫が着けてくれた軽量ヘルメットを外した。
この段階での成功率は半々だ。
ヘルメット無着用で失敗したらケガをするのは確実となる。
だが、あえてそうした。
バック転が成功したら姫にすべてを打ち明けるつもりでいた。
昔何度も殺されそうになった白雪姫。
その卑劣な犯人は他の誰でもない、王妃である事を正直に話して謝るのだ。
おそらくは許してもらえないだろう、王妃は覚悟の上だった。
このまま罪を黙っていれば、いつまでも楽しい時間が続くのかもしれない。
だが、それでは駄目だと思った。
白雪姫や木こり達を騙してるのと同じだからと。
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