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危ないからと止める姫を手で制し、王妃は飛ぶ体勢に入った。
途端恐怖が湧き上がる。
____恐い、ものすごく恐いわ。
おそらくバック転は成功する、なぜだかは分からないけど飛ぶ前から確信が持てるのよ。
ああ、それでも怖いの。
だってそうよ、私が本当に恐れているのはケガや失敗じゃない。
白雪姫に嫌われ軽蔑される事だ。
でも、……でも、これは私の罪と罰、飛ばない訳にはいかないの……!
流れる汗を手で拭い、王妃は上げた両腕を勢いよく下ろすと同時に腰を落とした。
そして、膝をバネに思いっきり大地を蹴る。
体が宙を浮いて逆さになった視界の隅に白雪姫の驚く顔が見えた次の瞬間、ダンっと両足が大地を踏んでいた。
どうやら成功したらしい。
あっという間の事だった。
キャーキャーと飛び跳ねて喜ぶ姫にがっしりとホールドされた王妃は、一瞬姫を抱き締めてから、そっと体を離し、震える声で自身の重ねた罪を告白した。
すべてを聞いた白雪姫は、
「お継母様……話してくれてありがとう。……だけど、私それ知ってたよ。あのね、お継母様の作った最強の解毒剤、元々は毒薬をベースに改良したものだって聞いた時から、普通の王妃であるお継母様がどうしてそんなもの作れるのかって疑問に思って……色々と調べちゃったんだ。毒薬……変装……物売りのお婆さん……調べれば調べるほど、もしかしてって思って……それで、ごめん、」
そこで言葉を切った白雪姫は、数瞬の沈黙の後、気まづそうに眉を寄せると続きを話した。
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