第1章 あの女は不死身の化け物か!?

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「本当にごめんなさい、……私、森小屋からお城に帰って、お継母様がいない時に勝手に部屋に入ったの。そしたらね……魔法の鏡さんが私に話しかけてきて、真実を教えてあげるって……その時にすべてを知ったんだ。すごくショックだった。間違いであってほしいと思った。私を襲った暗殺者がお継母様だったなんて……」 震える声の姫の話を聞きながら、王妃は硬く目を閉じて自分の罪を後悔し続けていた。 不思議な事に、勝手に話した魔法の鏡を責める気にはならなかった。 鏡は何度も言っていた、『二位でも良いじゃありませんか』と。 それを聞かなかったのは他の誰でもない、王妃自身であると痛いくらいの自覚があった。 「あの時はすごく悲しくてめちゃくちゃに泣いたんだ。そしたらね、鏡さんにこう言われたの。『卑怯で嫉妬深くてイヤな奴だったんですよ、王妃様は。でも、あなたに命を救われてから変わりました。ですからどうかお願いです。これからの王妃を見てやってくれませんか?』って」 王妃は心で毒づいた。 ____鏡のヤツ、そんな事があったなんて一言も言わなかったのに、 と同時、鏡の言葉にどうしようもなく泣きたくなった。 「最初は正直わだかまりもあったよ。だけど思ったの、昔と今は違うって。昔、私達がお城で暮らしてた頃、ほとんど話もしなかった。お互い何を考えてるか分からなかった。でも今は? 今の私達は一緒にバック転の練習したり、ご飯を食べたり、お喋りしたりするじゃない。一緒にいると楽しいじゃない。そりゃあ、たまにはケンカもするけど嫌いにはならない。それってお継母様も同じでしょ? だから、過去は過去だって思う事にしたの。それに……もし、今でも悪い人なら、こんなに辛そうな顔はしないと思うし、そもそもずっと内緒にしたと思うんだ。それをわざわざ私に話して謝ってくれた……だから私、今とこれからのお継母様を信じる。大好きなお母さんを信じるよ」 どう考えたって王妃が悪い。 それなのに白雪姫は、すべてを分かった上で王妃を許してくれていた。 とは言え、……まだほんの少女である白雪姫がその真実を知った時、どれほど傷ついた事だろう。 ____なんて娘だ……愚かな私には勿体ないくらいの優しい娘、 王妃は涙をボタボタ落とし「ごめんなさい」と何度も謝り白雪姫に縋りつく。 姫と出会ってから十数年。 王妃はこの日初めて、白雪姫の良い母親になりたいと、強く、強く願ったのだった。
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