第2章 白雪姫とシンデレラ

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森小屋のキッチンに立つ白雪姫は、蒸かしたカボチャをボールの中に入れた。 そして、鍛え上げられた鋼の腕をフルに使い、力強く、そして丁寧に潰していく。 その隣では。 料理とは縁遠い、王妃があたふた慣れない手つきで、あらかじめ白雪姫が刻んでおいた、みじん切りの玉ねぎをバターで炒めていた。 「し、白雪、玉ねぎはこれで合ってる? 私、失敗してない?」 へっぴり腰でおっかなびっくり、五秒に一度は確認をとる王妃さま。 そんな王妃に白雪姫がこう言った。 「大丈夫! お母さん上手だよぉ! その調子で玉ねぎが透明になるまで、焦さないように炒めてね!」 「と、透明ですって!? 玉ねぎって透明になっちゃうの!? 最終的に見えなくなっちゃうの!?」 「あははは、見えなくはならないよ。そうだなぁ、正確に言うと半透明になるまで、かな」 「ああ……びっくりした。半透明ね。分かったわ……それにしても料理って難しいし緊張するわね。解毒剤作ってるほうがよっぽど簡単よ……」 「いやいやいや、そっちのほうが難しいって」 母娘で並んで和気あいあい。 外を歩けば寒さで耳が痛くなるよな十一月。 クリスマスまで一カ月に迫ったこの日は、朝から姫と王妃の二人でこれからやってくるお客様の為に美味しいランチを作っているのだ。
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