第2章 白雪姫とシンデレラ

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◆ 王妃と白雪姫がこんなに仲の良い親子になる数年前。 白雪姫は雪のような白い肌、黒炭のような黒い髪、鮮やかな血のような赤い唇、華奢で儚げで、シンデレラにも負けてない絶世の美少女だった。 魔法の鏡調べでは、これまで美の世界ランキング第一位だった王妃を年頃になった白雪姫があっさりと抜き去り、二位の王妃と大差をつけての堂々第一位に輝いていた。    当時の王妃は美と若さに執着するあまり、自分の邪魔をする白雪姫を幾度となく暗殺しようと試みた。 が、白雪姫の運の強さと、本来の生命力、そして姫を娘のように愛してやまない七人の木こり達の力によって何度も死の淵から生還してきたのだ。 白雪姫は何度も恐い目に遭いながらも、謎の暗殺者に怯え森小屋に閉じこもる……なんて事はしなかった。 恐怖心よりも自分のせいでこれ以上七人の木こり達に心配を掛けたくないという思いの方が勝っていたからだ。 もし次に暗殺者に襲われても自分でなんとかしたい……だけど、こんな痩せっぽっちな身体じゃ駄目だ…… 白雪姫は切望した。 誰かに襲われても走って逃げ切れるような脚力とスタミナがほしい、それでも追い付かれてしまったら暗殺者と戦えるだけの腕力がほしい、相手の攻撃をかわせるだけの俊敏さがほしい、攻撃を食らっても最小限のダメージにとどめられるような筋肉の鎧がほしい、そう、誰にも負けない強さがほしい……! そして、思ったのだ。 ああ、そうか。その強さ、持っていないなら手に入れればいいのだ、と。 身体を鍛えるにあたり、白雪姫はまず最初に黒炭のような美しい長い髪をナイフで切り落とした。 逃げる時、または戦闘になった時、長い髪は敵に掴まれ引きずられる可能性があると考えたからだ。 次に食事のメニューを見直した。 せっかくトレーニングを積むのなら効率的に筋肉を育てたい、良質なたんぱく質は良質な筋肉を作る。 その上で雨の日も風の日も暑い日も寒い日も毎日欠かさずトレーニングを重ねていった。
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