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夏が終わり瞬く間に秋が消え、長い冬も離れ去り、季節は再び春になった。
城でも、街でも、森でも、いたる所で色とりどりの花が咲き蝶が舞い、溶けた氷に心が弾む。
降り注ぐ日差しは明るく、優しい風が人々をくすぐるたびに、陽気な歌と笑い声がこだました____
____一方、春の日差しも遮断する城の地下研究室では。
積み上がった書物の向こう側、ガラスの小瓶に入れられた無色透明の液体をうっとり眺める王妃がいた。
何日も眠っていないのか目の下が青黒い。
結った髪もざんばらに振り乱れ、疲労が色濃く見て取れる。
そんな状態であるにも関わらず、王妃は目をギラつかせ口角をこれでもかと上げていた。
そして、
「できた……一年かけてやっと完成した……! これで白雪姫を殺す事ができるわ。……待っていなさい、白雪姫。もうすぐあなたを殺してあげるから……!」
こう独り言ち、研究室を後にしたのだ。
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