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シンデレラは顔を真っ赤に小さくコクンと頷いた。
ああ、今日こそありがとうって言わなくちゃ……ううん、言いたい! 伝えたいよ!
お願い……私の声、少しで良いから出てほしい、ありがとうって一言だけでいいから……!
「……ぁ…ぁ…」
シンデレラが必死の思いで感謝の一文字目を絞りだした、その時、
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一番上の姉の声だ。
何事かとシンデレラと継母が振り向くと、姉は大事なドレスに大きな黒いシミを付け、座り込んでわんわんと泣きじゃくっていた。
「どうしてこんな事になったの!」
目の前の惨状に動揺し、思わず大声を上げた継母に上の姉は、
「嬉しくて……つい……ドレスをあてて……ダンスのつもりでクルクル回っていたの……そうしたら机にぶつかってしまって……インクの瓶を倒してしまったの……ごめんなさい……ドレス汚しちゃった……私が悪いの……もう舞踏会には行けないわ……!」
なんとかそこまで説明したところで上の姉は火が付いたように泣き出した。
継母も嬉しさのあまりの不幸な事故に娘を叱る事もできず、かといってもう一枚ドレスを新調するには時間もお金もなく困り果てていた。
「……あ…あの……」
小さすぎる声その声がシンデレラのものだと気が付くのに数瞬の時間が必要だった。
声の主が誰のものなのか、それがわかった時、継母も、泣いていた上の姉も、オロオロしていた下の姉も驚いて一斉にシンデレラの顔を見る。
「あ、あの……お姉ちゃん、これ……私のドレスを着てください。だいじょうぶです。きっと似合うと思います。だから泣かないで……笑って……」
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