第2章 白雪姫とシンデレラ

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「大丈夫よ、シンデレラ。あなたはこんなに優しくて良い子だもの。嫌われるはずがないわ。あなたの家族はフェアリーゴッドマザーが必ず連れてきてくれる。信じて待ちましょう」 一番の長身の白雪姫も、人ごみの中にフェアリーゴッドマザーの姿を探しながら、元気に答える。   「そうよ、シンちゃんを嫌いになれる人はいないわ。私だってシンちゃん大好きだもの。きっと人が多すぎてここに来るのに時間がかかってるだけ」 確かに遅い……王妃と白雪姫は心の中でそう思いつつも、勤めて明るくシンデレラを励まし、早く来てと切に願っていた。 シンデレラがどんどん無口になっていくのとは反対にイブの夜は大いに盛り上がりを見せていた。 こんな夜はお酒も進む。 ほろ酔いの笑い声と歌声と嬌声と、雑多な騒がしさの中に、飲みすぎているのか少々呂律の回らない男の怒鳴り声が突如広場に響き渡った。 「あんたら! よくもノコノコと外に出てこれたなぁ! 今夜は町のみんなでクリスマスイブを楽しんでるっていうのに、あんたらみたいな卑怯で意地の悪い母娘にウロウロされたんじゃ台無しだ! 帰れ帰れ!!」 広場に集まっていた人々が一斉に怒鳴り声のした方向を見た。 最初こそせっかくのイブの夜に酒に酔い、罵声を飛ばす男への非難の声が小さく飛び交っていた。 だが、男が誰に向かって怒鳴ったのか、怒鳴られた人は誰なのか。     
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