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それぞれの目でその被害者を確認した次の瞬間、場の空気が明らかに変わった。
それは黒く、重く、怒りに満ちた凶悪なものだった。
ほんの数瞬の沈黙が流れ、その後のもう一瞬で怒鳴られた者達がぐるりと町の人々に囲まれた。
時間にすれば星の瞬きよりも短いであろう。
だがそれでも人々の怒りを一気に最高潮へ引き上げるのに充分すぎる程足りていた。
そして、始まった。
「おまえら、なにしに来たんだ! 帰れ!」
「どのツラ下げて外に出た!」
「再婚相手の連れ子を苛めるなんて最低だよ!」
「わざとドレスにインクをこぼしたんだってな!」
「毎日毎日、掃除やら洗濯やら押し付けて!」
「かわいそうに! あんなにキレイな女の子が灰だらけだったじゃないか!」
「優しい子だからって付け込んで! コキ使って、自分達は楽をして! 恥を知れ!」
「ガラスの靴を無理やり履こうと自分でかかとを切ったんだろう? なんて浅ましい!」
あらゆる方向から放たれる事実無根の罵声の矢が、囲まれた中心で震えながら抱き合う母娘に容赦なく降り刺さり、その横で赤いマントを着た老婦人が声を荒げて抗議をしているのだが、群衆の怒鳴り声に空しく掻き消されていた。
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